特集TERASOLUNAのグローバル展開をレポート

vol.4 グローバル展開状況レポート:現場へのインタビュー(2)
〜TERASOLUNA SSの作成から、海外の開発現場での反響まで〜

掲載日:2012年2月14日

前号にて、東南アジア地域向けの開発標準化の立ち上げについて現場の声を中心にご紹介しました。今号では、実際にTERASOLUNA SSの 作成を進めた技術者に、TERASOLUNA SSの特長や工夫点、今後の展開についてインタビューを行いました。

東南アジア地域に対応した開発手順「TERASOLUNA SS」の作成の狙い

NTTデータ 技術開発本部 課長 渡邊泰史
主任 小堀一雄

Q)東南アジア地域の特性とは、具体的どのような開発規模、品質を想定されているのですか。
NTTデータ 技術開発本部 課長 渡邊泰史
渡邊) 小規模アプリケーション開発として、具体的には下記を目安としています。
  • 開発規模:3〜6ヶ月
  • 開発期間:50ks未満
  • 開発工数:20人月
また、当該手順が想定している品質要求レベルは、従来のNTTデータが日本国内のシステム開発で担保しているレベルではなく、システム停止やデータベース破壊などのクリティカルなバグがなければカットオーバーできる品質を前提としています。
Q)東南アジア地域向けの標準化検討にあたり、これまでの標準化と異なった点はありましたか?
渡邊) 今までは、どちらかと言うとトップダウン的に標準化を検討してきていましたが、今回は、現地のシステム開発のやり方を徹底的に検証することで、実用性を高めながら策定を進めた点です。具体的には、現地メンバへのインタビューを始め、 当方メンバが現地に常駐して実プロジェクトへの試行適用を繰り返しながら策定してきました。
Q)TERASOLUNA SSの特徴を教えてください。
NTTデータ 技術開発本部 主任 小堀一雄
小堀) TERASOLUNA SSの特徴は、主に3つあります。
1つ目は、通常、設計や結合テストは詳細レベルを分けて多段階で実施するのですが、許容できるリスクの範囲内で複数の段階を統廃合することで、タスクを大幅に削減しました。
2つ目として、設計書の記載レベルを標準化するためにフローチャートのシンプルな記述ルールを制定し、レビュー効率を向上させました。
3つ目は、標準化したフローチャートからテストカバレッジを把握するためのマトリクスを整備し、品質向上を実現しました。
※この作業はTERASOLUNA RACTES for ITを利用することで自動化できます。
Q)工夫した点について、具体例を教えてください。
小堀) 上記の特徴の妥当性を確認するために、複数の小規模案件とタイアップし試行適用しました。また、小規模案件では仕様の全体像を把握したキーマンが存在する場合や、コミュニケーションが密になるなどの利点があります。これを前提として、大規模開発ではコミュニケーションのために必要だった中間成果物を削減しました。
そして、小規模案件はプログラム製造規模が小さいため、統計学をベースとした品質水準値の利用に適さないことが多いため、テストカバレッジを重視した品質確保の仕組みを様式に搭載しました。
実際に小堀さんが参画した、マレーシアの試行適用プロジェクトのメンバの方から、率直な感想と期待をいただいています。

マレーシア 試行適用プロジェクト

システム概要
日系情報通信会社様 機器情報管理システム
顧客の資産(ルータなどの機器)情報の登録、検索を行うシステム
開発体制
要件定義・設計:NTT DATA Malaysia Sdn. Bhd
製造:NTT DATA VIETNAM COMPANY LIMITED

NTT DATA Malaysia Sdn. Bhd.
太田マネージャー、Kok(コック),Head of Professional Services:

Q)TERASOLUNA SSの導入による効果、良かった点
設計を担当したマレーシアと、開発を担当したベトナムとの間のコミュニケーションロスが減り、UTバグが低く抑えられ、システム品質が高く保たれました。また、タスクの実行漏れ、レビュー指摘事項の反映漏れが減り、作業品質を確保できました。
Q)課題となった点、TERASOLUNA SSに今後期待する点
今回のプロジェクトでは、複雑な処理はなかったものの、システムの特性上、特に料金計算などクリティカルな処理がある場合については、その部分だけでもユニットテストがあると安心です。
TERASOLINA SSが対象とする範囲に関しては、大きな改善を図ることができましたが、ユーザ受け入れ試験では、ユーザと設計担当の間で意識ずれが生じました。特に今後ユーザを巻き込んだアジャイル開発を取り入れる予定のため、要件定義も視野にいれた標準を整備してほしいです。
※マレーシア拠点の要望について他の開発拠点でもヒアリングした結果、複雑な業務ロジックや共通処理などを扱う重要なプログラムに関してはユニットテストを行うよう、オプションタスクとして追加しました。
TERASOLUNA SSは、このように現場のフィードバックを受けて今後も改善していく予定です。

NTT DATA VIETNAM COMPANY LIMITED
武井ホーチミン支店マネージャ、Tuan(トゥアン)マネージャー:

Q)TERASOLUNA SSの導入による効果、良かった点
縮小版の成果物での開発が確認でき、今後の開発においての基準となるものができたと思います。TERASOLUNA SSにより開発手順を共通化していくことで、今後の開発者(システムアナリスト/プログラマ)が新しい様式に慣れる稼働を削減していくことが可能となりました。また、オンライン処理のフローチャートから結合テストの項目を自動で作成するルールが出来たことで作業の平準化を図ることができ、さらにテスト系プロセスの分離もできると考えています。
Q)課題となった点、TERASOLUNA SSに今後期待する点
今回の成果物は本当にミニマムで、今後多くのプロジェクトに適用する場合は、プロジェクトに応じた追加があると思っています。開発の中で多かったカスタマイズについては今後もフィードバックしたいと思います。
また、分担を考慮した場合、今後、要件定義をタイ・マレーシア、設計をベトナムと考えているのですが、要件定義の成果物の中にロジックに関する記載をする箇所が少ないため、現状のままでは難しいと考えています。
ユニットテストに関して、日本向けの案件など品質を要求される一部のモジュールでは求められると思うが、仕様変更が多いローカルの案件については、生産性・納期優先でよいと考えています。
東南アジア地域発の開発標準として実プロジェクトに適用し熟成させていきたいと考えていますので立ち上げ時のサポート等、今後も連携した取り組みをしていきたいと思います。
Q)TERASOLUNA SSの作成状況、今後の展開について教えてください
渡邊) 東南アジア地域での実プロジェクトへの適用結果をフィードバックしたものを、 2012年1月にプレリリースするための整備を進めております。さらに、国内における小規模・短期開発プロジェクトでの展開も視野に入れた整備を進めていきます。

ありがとうございました。
国内、海外ともに開発手順が展開していくことが分かりました。
今後も開発手順の取り組みについてご紹介していきたいと思います!

目次:「グローバル展開におけるTERASOLUNAの取り組み」